IT導入補助金・デジタル化・AI導入補助金を過去に使い、交付決定から実績報告までを一通り終えた事業者向けの記事です。「また同じ制度を使いたいが、今回も申請できるのか」を判断するための条件を整理します。2026年9月時点で公表されている公募要領(通常枠、2026年8月28日改定版)をもとにしています。制度の運用は変わることがあるため、実際に申請する際は公式サイトで最新情報を確認してください。
「12ヶ月以内の再申請」は絶対にできないのか
まず、申請そのものができなくなる絶対的なルールがあります。
IT導入補助金2025の通常枠及び複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者(グループ構成員を含みます)は、交付決定日から12か月以内はデジタル化・AI導入補助金2026の通常枠に申請することができません(公募要領(通常枠) 3-2(4)(ア))。
判定は単純です。自分(またはグループ構成員)が受けた交付決定日に12か月を足し、その日を今日が過ぎているかどうかを確認してください。過ぎていなければ、対象となる枠の交付決定を受けている間は通常枠に申請できません。
このルールは「対象になれば申請自体ができない」という話です。次に説明する「プロセスの重複」とは性質が異なるので、混同しないよう分けて考えてください。
導入するITツールの「プロセス」が前回と重複していないか
ここからは、「申請はできるが、審査上どう扱われるか」という別のルールです。12ヶ月ルールのように申請の可否を決めるルールではありません。
IT導入補助金2024又はIT導入補助金2025で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと、今回導入するソフトウェアが有するプロセスが重複する事業者は、審査上の減点措置の対象になります(同公募要領 3-3(2)②減点措置 3))。ここでいう「プロセス」(業務プロセス)とは、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上する又は効率化されるものを指します。公募要領では「顧客対応・販売支援」「決済・債権債務・資金回収」「供給・在庫・物流」「会計・財務・経営」「総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス・統合業務」などの区分(Pコード)があらかじめ定義されています(同2-2(3)、別紙2:業種・プロセス一覧)。
ただし、重複の程度によって扱いが変わります。プロセスが完全に一致する場合は、不採択とすると定められています(同3-3(2)②減点措置 3)注書き)。
整理すると、次の2段階です。
- プロセスが一部重複するだけなら、申請自体はできるが減点される
- プロセスが完全に一致すると、不採択になる
前回と全く同じプロセス構成のまま申請しようとしていないか、導入予定のツールを見直しておいてください。
12ヶ月ルール・プロセス重複以外に、申請自体ができないケースはあるか
もう一つ、申請自体ができなくなるケースがあります。「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録を受けたITツールに関するものです。
サイバーセキュリティお助け隊サービスとは、中小企業のサイバーセキュリティ対策を支援するため、相談窓口、異常の監視、事案発生時の初動対応、簡易サイバー保険などを、安価かつ効果的なワンパッケージで確実に提供するサービスです(同公募要領 別紙4:関連事業紹介「サイバーセキュリティお助け隊サービスリストとは」)。
このサービスの登録を受けたITツールについて、IT導入補助金2022、2023、2024及び2025において、いずれかの枠で交付決定を受けた場合、又はデジタル化・AI導入補助金2026において、いずれかの枠で申請を行っている若しくは交付決定を受けた場合、本事業(デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠)の申請を行うことはできません(同3-2(4)(ア))。
過去にこのサービスで交付決定を受けている、あるいは今回すでに他の枠で申請中・交付決定済みの場合は、通常枠への重ねての申請ができないということです。
不採択・取下げのあとの再申請はどうなるか
ここまでは制約の話でしたが、前向きな情報もあります。
各締切回で公表される採択結果にて不採択となった場合、次回以降の締切りまでに交付申請を行うことができます。また、交付決定後から、実績報告を経て補助金の交付を受けるまでに取下げをした場合も、同じく次回以降の締切りまでに交付申請を行うことができます(同3-2(4)(イ))。
一度不採択になった、あるいは交付決定後に事情があって取下げた、というだけで再申請の道が閉ざされるわけではありません。
過去に加点を受けたが達成できなかった場合、今回の審査にどう影響するか
最後に、今回の申請そのものではなく、他の補助金への影響として押さえておくべき規定があります。
加点を受けたうえで採択されたにもかかわらず、申請した加点要件を達成できなかった場合、効果報告において未達が報告されてから18か月の間、中小企業庁が所管する補助金への申請にあたっては、正当な理由が認められない限り大幅に減点するとされています(公募要領(通常枠) 3-3(2)①【補足4】)。
対象となる補助金は、2026年1月時点で次のとおり公表されています(同【補足4】)。
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 事業承継・M&A補助金(旧事業承継・引継ぎ補助金)
- 成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)
- 事業再構築補助金(中小企業省力化投資補助事業を含む)
ただし、災害を受け、事業において著しい損失を受けたと認められる場合など(震災・風水害・落雷・火災その他の災害や盗難により事業に著しい損失が生じたと認められる場合、又はこれに準ずるものとして中小企業庁が認めた場合)にやむを得ず加点要件を達成できなかったときは、この限りではありません。その場合は、効果報告の提出時に理由を説明し、事務局がやむを得ないと認めた場合に限り、減点が免除されます(同【補足4】)。
なお、この規定が関わってくるのは効果報告の段階です。交付決定のあと、実績報告で何をいつまでに行えばいいのかを別の記事にまとめています。効果報告の位置づけもあわせて解説しているので、確認しておいてください。
再申請できるかどうかの判定チェックリスト
ここまでの内容を、自分の状況に当てはめて確認できるようにまとめます。
- 前回(IT導入補助金2025の通常枠又は複数社連携IT導入枠)の交付決定を受けている場合、交付決定日から12か月経過している
- 導入予定のITツールのプロセスが、IT導入補助金2024又は2025で交付決定を受けたソフトウェアのプロセスと重複していない(もちろん完全一致もしていない)
- 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の登録を受けたITツールについて、過去の交付決定やデジタル化・AI導入補助金2026での申請・交付決定と重なっていない
- 過去に加点要件が未達成だった場合、効果報告での未達報告から18か月が経過している(該当しない場合も含む)
すべて「はい」であれば、この記事で挙げた制約には該当しません。ただし、細かい要件や最新の運用は変わることがあるため、申請前に必ず公式サイトで最新の公募要領を確認してください。

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